皆さんは、神奈川県の鎌倉から江ノ島を経由して藤沢までを結ぶ江ノ電に乗った事がありますか?
観光地としても人気の鎌倉・江ノ島・湘南エリアを走っているので、一度は乗ったがある人も多いんじゃないでしょうか?
コロナ以前の休日は、ディズニーのアトラクションか?と思うぐらい行列ができており、電車に乗るために1時間ほど待たされるということもありました。
そんな、江ノ電ですが、実は路面電車ではなく、一般の鉄道だということを知っていましたか?
腰越駅から江ノ島駅までの区間は、道路上を走っているので、路面電車だと思っている人も多いと思いますが、実は路面電車ではありません。
一般的に道路上を走る併用軌道が少しでもある場合、路面電車として扱われるのが普通です。
しかし、江ノ電は、併用軌道があるにもかかわらず、路面電車として扱われていません。
江ノ電以外にも同じように併用軌道が存在しながら鉄道として扱われているのは、熊本県にある「熊本電気鉄道藤崎線」があります。
過去には、これ以外にもあったようですが、現在はこの2路線が特別な扱いを受けています。
どうして、この2路線は特別な扱いを受けているのでしょうか?
ということで、なぜ江ノ電は路面電車ではなく鉄道なのか?ということを解説していきます。
鉄道と路面電車の違いとは?
そもそも、鉄道と路面電車の違いは何なのでしょうか?
答えは、準拠する法律が異なります。
鉄道の場合は鉄道事業法、路面電車の場合は、軌道法に準拠して設置されています。
これら二つの大きな違いは、走行する線路にあります。
鉄道事業法は専用軌道のみ走行することが原則となっており、道路を走行することができません。
それに対して、軌道法は、併用軌道も走行することができます。
よって、普通に考えると、併用軌道を走行する江ノ電や藤崎線は、軌道法を準拠した路面電車です。
しかし、江ノ電や藤崎線では、鉄道事業法を準拠した鉄道として今日も運行されています。
もともとは、軌道法を準拠した路面電車として建設された
江ノ電の開業は1902年で、現在の藤沢駅から江ノ島駅までの区間が先行開業されました。
この区間は、専用軌道しかありませんでしたが、のちに延伸を予定したので開業当初から軌道法を準拠した路面電車という形で開業しました。
その1年後、現在の江ノ島駅から七里ヶ浜まで延伸され、道路上を走る路面電車らしくなってきました。
そして、さらに7年が経過して、現在の鎌倉駅に近い場所まで延伸され、全線開業となります。
この時点ではまだ、軌道法を準拠した路面電車として運行されていました。
藤崎線も同様に最初は路面電車として開業されました。
しかし、そのあと、ある理由により鉄道事業法を準拠した鉄道に変更することになります。
江ノ電は国策により変更された
江ノ電が路面電車から鉄道に変更された理由は、国に要請されたからです。
どうして、国が変更を要請したのかというと、第二次世界大戦が行われていたからです。
変更許可が出された1944年は、第二次世界大戦の真っ只中で、その頃の東海道線、横須賀線は日本軍の物資を運ぶ貨物としての役割を果たしていました。
もし、ここが攻撃され長期間不通になってしまうと、日本軍にとって大きなダメージとなります。
そこで、考えられたのが江ノ電を迂回路として運用することです。
東海道線の藤沢駅から、横須賀線の鎌倉駅の区間を江ノ電を使って迂回する事ができれば、万が一の事態になった時も、物資の運搬がしやすくなります。
しかし、軌道法のままでは、車両の長さなどに制限があり、貨物列車を走らせることはできません。
そこで、国は特別に江ノ電を鉄道事業に準拠した鉄道に変更することを許可しました。
江ノ電の車両は普通の電車より小柄ですが、軌道はJRと同じ1067mです。
よって、大規模な工事をしなくても線路さえつなげてしまえば、直通運転する事ができます。
貨物は走らなかった
1944年に鉄道事業法への変更を許可されましたが、実際に変更されたのは1945年11月です。
つまり、江ノ電が鉄道に変わったのは終戦後ということです。
結果的に江ノ電は迂回路として使われることはありませんでした。
しかし、その後に元に戻そうという動きはなく、ここまで鉄道として運営されてきました。
理由は分かりませんが、東海道線や横須賀線が長期間不通になってしまった場合のことを考えて、戻さずに残しているのかと予想しています。
ただ、東海道線や横須賀線で走っている車両を江ノ電で走らそうと思うと、保安方式や設備は別として、カーブに対応できない区間が出てくるのかと思います。
万が一の時は、その部分だけ作り直すでしょうか、今後もJRの車両が走ることはないだろうと思います。
熊本電気鉄道藤崎線が鉄道に変更された理由
藤崎線の変更理由も調べてみましたが見つける事ができませんでした。
ただ、同じような時期に変更されているため、江ノ電と同じような理由があったんだと思います。
もしかすると、別の理由があったのかもしれませんが、国からの要請がで変更されたのは間違いなんじゃないかなと思います。
今後も変更されないのか
江ノ電が今後、軌道法を準拠した路面電車に戻るかというと、おそらく無いと考えています。
根拠はありませんが、ここまで変わらなかったので、江ノ電にしても、国にしても変えなければいけない理由というのが無いのだと思います。
もし変えるとすれば、そのままにすることにより、どちらかにデメリットが生じた場合です。
未来のことはわかりませんが、70年近くも、この状態が続いているので、相当な理由がなければ変わることはないと予想しています。