緊急地震速報の改修は精度を落とす原因になるのでは?

気象庁は8月1日に発生した、東京湾を震源とする緊急地震速報の誤報を受けて、11月14日より再発防止策を施したシステムの運用を開始したと発表しました。

これにより、誤報の数は減ると考えられますが、気になるのはその精度です。

誤報の数が減っても、旧システムでは配信されたはずの速報が新システムでは配信されなかったのでは意味がありません。

今回は、新しくなった緊急地震速報について詳しく調べてみました。

 

なぜ、誤報が発生するのか?

緊急地震速報の仕組みを理解すれば誤報が発生する理由もわかります。

まず、地震が発生するとP波と呼ばれる比較的小さな揺れが起こります。

その後、S波と呼ばれるP波よりも大きな揺れで、ゆっくりと進む波がやってきます。

基本的に甚大な被害を出すのは、このS波と呼ばれる波です。

緊急地震速報ではP波を一定数の地点で観測した場合に瞬時に計算を行い、過去のデータから震度とS波の到達時間を予想します。

もう少しわかりやすく時系列を追って説明すると

▼地震発生

▼P波とS波が震源地より徐々に広がる

▼観測地点(複数)でP波を観測

▼緊急時速報の予想・配信

▼震源地から離れた地域でS波が到達(揺れ始める)

これが、一連の流れです。

もう、お分かりかと思いますが、緊急地震速報が可能な理由はP波とS波の到達時間に大きな差があるからです。

よく、言われている震源地に近い場所では緊急地震速報が機能しないというのは、緊急地震速報に必要なP波とS波の到達時間に差が出ないからです。

そして、本題に戻って誤報が配信される理由は、二つ以上の地震が同時に発生する場合があるからです。

例え、震源地が違っても複数地点でP波を観測したということは、大きな地震が発生したということがコンピューターによって予測され、緊急地震速報を配信してしまいます。

また、観測機にノイズが発生した場合、それも揺れだと判断して、偶然、そのノイズの発生と小規模な地震がかなされば、大地震と予想されることもあるそうです。

これらが、東京湾や関西地方で大誤報が発生した原因と言われています。

 

どんな改修を行ったの?

今回のシステム改修では大きく二つのことを改善しました。

①地震学的にありえない異常値は予想の対象にしない

②1観測地点のみのデータを使って予想する場合はマグニチュードにあらかじめ上限を設定しておく

 

異常値は観測しない

これは、ノイズの発生により普段の地震活動ではありえないような異常値を観測した場合、配信の対象外にするというものです。

東京湾・関西地方の大誤報ともに異常値の観測があったようであれほどの巨大地震が予想されたようです。

 

マグニチュードに制限をかける

1箇所でしかP波を観測できなかったということは、それほど大きな地震でない可能性が極めて高いです。

しかし、直下型となると、P波が大きくなってしまい、大誤報を配信してしまうリスクがあります。

それを抑えるために、1箇所でしか観測できなかった場合は、マグニチュードに上限を決めて、非現実的な予想を配信しない仕組みにしたようです。

 

予想の精度が落ちるのでは?

気象庁が改修を行ったということは精度にもそれなりの自信を持っていると思うのですが、これが原因で配信されるべき速報が配信できなかったということも考えられます。

また、現在の地震学では、ありえないような異常値を観測する地震が発生する可能性も0ではありません。

そういった地震には対応しないという事を、今回の改修で遠まわしではありますが言っているような気がします。

確かに誤報は、少ない方がいいとは思いますが、命を守るために必要な誤報であれば、仕方がないと思います。

また、過去の大誤報でも、クレームの数より「地震が来なくて良かった」や「実際に起きた時のシミュレーションになった」という声も多くありました。

電車が一時的に運転を見合わせたり、恐怖の音が心臓に悪いなど少ない被害もありますが、それも大地震が事前にわかる代償だと思えば安いものです。

今回の改修により、本当に誤報の数だけが減るのであれば、いいことなのですが精度も落としてしまったのではと個人的に思っています。

近頃、内陸を震源とする地震が多発しており、南海トラフのカウントダウンも始まっていると一部の専門家からは言われています。

また、東日本大震災と同規模の地震が三陸沖を数年以内に襲う可能性もあると言われています。

今後、数十年間は、いつ・どこで熊本や鳥取のような大規模地震が発生するかわかりません。

日頃からの心がけで救える命も沢山あります。

今一度、緊急地震速報も含めて、地震に関することを再認識する機会を家族や友人と作ってみてはいかがでしょうか。

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