社会保険や住民税というと、わけもわからず給料から取られ、サラリーマンにとっては痛い出費の一つです。
私も、何度、あの引かれるお金さえなければ、豊かな生活を送れるのにと思った事でしょうか。
おそらく、殆どの人が基礎知識すら知らず、払っている事だと思いますので、今回は少しでも、理不尽な気持ちを解消するためにそれぞれの仕組みを解説していきたいと思います。
①社会保険料について知っておきたい事
■社会保険料の種類と概要
「社会保険料」とは、会社員が納める各種保険料の総称です。
社会保険料は、一般的に「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」「雇用保険料」「労災保険料」の5つに分かれています。
厚生年金保険料は、退職後に年金を受け取る為の保険料です。
健康保険料は、病院などで治療を受ける際に、窓口に保険証を提示すると、全医療費の3割負担で治療が受けられる保険です。
介護保険料は、40歳を過ぎると納付する義務が発生します。
老後に介護を受ける際に、各種の優遇制度が利用できる保険です。
雇用保険は、失業した際、求職活動中に給付金が受け取れる制度です。
労災保険は、雇用主が、すべての従業員を加入させる義務がある保険です。
労災保険料については、雇用主の全額負担で、従業員は自動的に加入しています。
業務中の事故でケガを負った場合の治療費は、労災保険から支払われます。
そしてこれらの社会保険料率は、毎年更新されています。
社会保険料率は、国の方針で、引き上げの方向に動いています。
■社会保険料は収入額に応じて決定
基本的には、社会保険は、会社員(雇用されている者)が加入する保険です。
個人で事業をやっている方や、自営業者、無職の方は、社会保険ではなく、別の健康保険制度や年金制度があります。
会社員の給料の毎月の総支給額から、社会保険料を天引きします。
厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険に関する社会保険料率は、年度ごとに、一覧表として公表されます。
「社会保険料率」は給料額に関わらず一定です。
社会保険料率の一覧表を見る際に、重要となるのが、「標準報酬月額」です。
標準報酬月額とは、簡単に言えば、会社員が受け取る「1か月分の給料の平均金額」です。
大抵は、年度の4月~6月分の3か月平均を標準報酬月額として、保険料を計算します。
社会保険料率の一覧表を参照し、自分の表報酬月額に相当した保険料を特定します。
例えば「標準報酬月額」が「等級10:165000~175000円」でしたら、社会保険料率一覧表に基づいて、厚生年金保険料等の金額が一目でわかります。
通常は、企業と折半で納付する事になっていますので、納付すべき社会保険料の半分を自分の給料から天引きされる事になります。
■年度ごとの社会保険料率の推移
社会保険料率は、一定の保険料率まで段階的に引き上げる事が決定しています。
これは、政府により、平成16年の年金改革により決定されたものです。
社会保険料率の引き上げが急激な為に、毎年、社会保険料が上がって家計に影響を及ぼしている実感がするかもしれません。
例えば厚生年金の保険料率は、13.5%から、毎年0.354%ずつ引き上げられ、18.3%にまで引き上げられてその後は一定となると定められています。
厚生年金保険料率だけでも、実質、約5%(会社と折半で2.5%)の引き上げになる訳ですから、会社員にとっては、耳の痛い話です。
給料明細の、控除額の欄には、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料の控除額がそれぞれ分けて記載してあります。
特に、厚生年金保険料の額が一番多いでしょう。
給料支給総額が多いほど、各種保険料の納付額も多くなります。
社会保険料総額が2~3万円単位になると「ずいぶん多く引かれてしまうなあ」というのが本音でしょう。
しかし、厚生年金は、老後の為の生活の安定の為です。
若い方は実感がないと思いますが、退職後に、厚生年金を納めておいて良かったと思う時が来ると思います。
■毎年の社会保険料率の変化に注目
社会保険料率は、年度に従って増加します。
現段階では、数年後に社会保険料率は固定化する予定ですが、制度の変更があるかもしれません。
特に、高齢化社会の進む現代において、労働人口が減少しており、国の収入となる、保険料徴収額も減少傾向にあります。
この事から、今後も、社会保険料率が引き上げの方向になる事が十分予想されます。
これからは、今まで以上に、会社員の手取り給与は厳しくなるという可能性を考慮して生活設計を立てて行きましょう。
②住民税について知っておきたい事
■住民税とは
大抵の社会人の方は、「給料から、住民税として毎月天引きされている」または、「毎年、住民税の請求書が来る」ので、住民税については身近なものです。
しかし、その計算方法は、良く知らない方も多いのではないでしょうか。
住民税は、「県民税(道府県民税)」と「市民税(市町村民税)」を合わせたものと考えて良いです。
自治体により、「市県民税」として、まとめて請求書が送付されてくる場合もあります。
国へ納めるのが「所得税」、地方自治体に納めるのが「住民税」です。
住民税の納付先は、その年の1月1日に自分が「住民票」を置いていた住所です。
年の途中で、転居等をすると、元の住所から、住民税の請求書が来る事になり、その代りに、現住所の住民税は来年から支払う事になります。
会社で給料から天引きされる場合も、毎年請求書が来る場合も、1年間に支払うべき住民税の計算方法は同じです。
以下に住民税の算出方法を述べて行きます。
■住民税の計算方法
住民税額の計算方法は、「均等割額」と「所得割額」を合計する事により算出します。
「均等割額」とは、その自治体の住民全員が、同じ額を負担します。
これは全国一律で、市町村民税が3000円、道府県民税が1000円です。
ただし、各自治体の財政状態を考慮に入れて、均等割額の引き上げ(または引き下げ)等が行われる事もあります。
「所得割額」とは、前年の1年間の所得に応じて課税される住民税の事です。
給与所得者を例にとると、まず、前年の1年間の総給与所得から、社会保険控除等の各種控除を差し引いた額を算出します。
これが課税対象となる所得額です。この金額に、住民税の税率をかけて計算します。
住民税の税率は、「市町村民税は6%、道府県民税は4%」と全国一律で決まっています。
課税対象所得の額は、毎年、会社から各人に配布される「源泉徴収票」の、「給与所得控除後の金額」の欄に記載してあります。
大ざっぱに計算すると、「1年間の総収入から、費用を差し引いて残った金額(課税対象所得額)」に、住民税の税率10%をかけた金額が、自分の納めるべき住民税額と言う事になります。
■各自治体の住民税の使い道
所得控除後の金額の約1割が、住民税として自治体に徴収されると考えると、ずいぶん高いと感じると思います。
また、財政赤字の自治体では、均等割額を引き上げている自治体もあります。
本来は、住民税の負担は、自治体により差が生じないように計算されているのですが、現実には、「自分の住んでいる市の市民税より、隣接市の市民税は安い」という噂が流れたりします。
試しに各自治体のHPで住民税の計算シミュレーションをしてみる事をお勧めします。
住民税は、公共の設備を維持管理する為の費用に使われたり、市町村の無料健康診断等に使われたりと、様々な用途に使われています。
住民の少ない地域ほど、どうしても1人あたりの住民税の負担額が大きい計算になります。
少子化に歯止めをかける為に、住民税を、小児科医療費無料や、保育園や託児所の充実に充てている自治体も多いようです。
住民税を支払っている分、公共サービスを大いに利用するのが賢い生活方法だと思います。
■住民税の計算方法は、基本的にはどの地方自治体も同じ
住民税は、単純な計算方法で算出されるため、節税対策がほとんどありません。
所得が少なくても、一定率で住民税の計算がされるのです。
住民税の支払いは、案外大きな家計の負担になります。
各自治体で徴収された「住民税」の使い道に、注目しておきたいものです。
子供の医療費、給食費の減額や、無料の公共施設など、住民税で公共サービスの充実を図っている自治体もあります。
使える公共サービスを十分に利用するのは納税者の権利です。有効活用しましょう。