ライバル企業だった阪急電鉄と阪神電鉄はなぜ経営統合したのか?

阪急電鉄と阪神電鉄は、2社ともに神戸から大阪を結ぶ路線を持つライバル会社ですが、実は経営統合が行われ、今は同じ企業グループということを知っていましたか?

阪急電鉄は、神戸線・京都線・宝塚線の3路線があり、そこから派生する支線を含めると合計10路線を運営する鉄道会社で、宝塚歌劇団の運営や、高級住宅街の開発を行うなど、高級路線というイメージの鉄道会社です

対して、阪神電鉄は、本線となんば線の2つの路線を運営しており、大手私鉄の中では営業距離は短い鉄道会社ですが、阪神タイガースと言う圧倒的な知名度を持った球団を保有しているおかげで、全国的に知名度の高い鉄道会社です。

そんな異なる特徴を持った、2社ですが、現在は「阪急阪神ホールディングス」を親会社とした、同じグループ企業として経営されています。

どうして、競合している路線を持つ鉄道会社が経営統合しなければいけなかったのか、気になりますよね。

今回は、ライバル企業だった阪急電鉄と阪神電鉄が経営統合をした理由を解説していきます。

創業時は全く別の会社だった

阪急電鉄と阪神電鉄が経営統合をしたのは2006年の出来事です。

それまで、資本関係はなく、全く別のライバル企業として、神戸から大阪のシェアを奪い合ってきました。

実際は、阪急と阪神以外にも強敵、JRの存在もあり、神戸から大阪の鉄道路線は、日本でも有数の激戦区として知られています。

最初は、私鉄2社がリードしていたようですが、国鉄の民営化以降、JRになってから、JRの速度や快適性が向上し、阪急と阪神はシェアを少しづつ落としていきました。

それでも、神戸から大阪の輸送需要は多いので少しシェアを落としたぐらいでは、経営に影響することもなかったと思います。

しかし、2006年に阪急電鉄の親会社である阪急ホールディングスが阪神電鉄に対してTOB(公開買い付け)を行い、2社は経営統合することになりました。

これにより、阪急阪神ホールディングスが誕生し、阪急阪神ホールディングスは、ほぼ並走する路線を2つも所有したと言うことになります。

いくらJRのシェアが伸びてきたとは言え、大手私鉄2社が経営統合しなければいけないほど、収益が危うくなったわけではありません。

それに、どうせ経営統合するなら、同じエリアを並走する阪神電鉄よりもリスクヘッジや新規開拓を考えて、別のエリアで路線を持つ企業を買収した方がいいんじゃない?と思いますよね。

僕が阪急電鉄の経営陣なら、和歌山から大阪の輸送を担う南海電鉄や神戸から姫路までを結ぶ山陽電鉄を買収した方が、今後の発展につながると考えます。

しかし、阪急電鉄は阪神電鉄を買収し、経営統合をすることを決めました。

始まりは、村上ファンドによる阪神電鉄株の買い占め

阪急と阪神の経営統合は、村上ファンドによる、阪神電鉄株の買い占めから始まりました。

村上ファンドを知らない人もいるかもしれないので簡単に説明すると、村上ファンドは、投資や企業買収のコンサルティングを行なっていた企業グループで、主なビジネスモデルは、株式を大量に購入した上で、経営陣に対して改善提案を行い、企業価値を上げてから株を売り抜けるというものでした。

このことから「もの言う株主」として注目を集め、株に興味がない人でも名前だけは聞いたことがあると言う人も多いんじゃないでしょうか。

村上ファンドが一番有名になった出来事は、ニッポン放送株の買い占めでインサイダー取引をしていたとしされ、逮捕されたことです。

ちょうど、これと同じ頃、阪神電鉄の株も大量に購入していました。

どうして、村上ファンドが阪神電鉄に注目をしたかと言うと、阪神タイガースや梅田周辺の土地など、価値のあるコンテンツを所有するにも関わらず、株価が割安で放置されていたからです。

これらのコンテンツを分社化させ、阪神電鉄としての企業価値を上げて、株価が上がったところで売り抜けようとしていたと言われています。

阪神電鉄の経営陣は村上ファンドに買い占めされそうなことを知らなかった

村上ファンドが買い占めをおこなっていた当時は、阪神タイガースの成績が良かったこともあり、これに伴う株価の上昇だと思って、阪神電鉄の経営陣は何も疑っていませんでした。

しかし、実際は村上ファンドが少しずつ買い占めをおこなっており、阪神電鉄の経営陣がそれに気がつくのは、村上ファンドの持株数が26%を超えた頃でした。

株式を大量に保有すると、大量保有報告書を国に提出する必要があるのですが、その提出には若干のタイムラグがあります。

なので、村上ファンドが提出し、阪神電鉄の経営者が知った頃には、既に阪神電鉄株の4分の1が買い占められ、筆頭株主になってしまっていました。

さらに、子会社である阪神百貨店の株も18%以上保有しており、阪神電鉄は村上ファンドに支配されていたと言っても過言ではありません。

普通なら、ここまで買い占めされると、経営陣は買収対策を行うのですが、株価上昇の要因を阪神タイガースの成績によるものだと本気で思っていたようで、全く警戒していなかったようです。

その結果、最終的に村上ファンドの保有株数は46%を超え、村上ファンドの計画通り、経営陣に改善提案を提出し、企業価値の上げるための取り組みが行われていきました。

その一つとして、同じく関西の大手私鉄である、京阪電鉄との経営統合があり、阪神電鉄としても過去に経営統合の検討があったため、京阪電鉄と交渉を開始しますが、合意には至らず、村上ファンドは、新たな提案として阪神タイガースを上場させるべきと言う内容を提出してきました。

阪神電鉄の経営陣は阪神タイガースの上場を拒否

村上ファンドから阪神タイガースを上場させるべきとの提案がありましたが、阪神電鉄の経営陣はこれを拒否します。

拒否の理由は、阪神タイガースが上場することで母体である阪神電鉄の経営も危うくなるからです。

上場することで、一時的に価値は上がりますが、チームの成績やファンの数によって株価が大きく乱高下することが予想されます。

そうなると、多くの人は、阪神タイガース株を投資目的ではなく、投機目的の銘柄として扱うようになります。

そのような株主ばかり集まった銘柄は、株価の乱高下だけが期待され、企業価値の上昇などは全く期待されなくなります。

その結果、阪神タイガースの経営は、利益を求める経営ではなく、株価を乱高下させる経営が求められ、企業価値を向上させようという動きはなくなり、次第にファンは離れ、株価も下落し、その筆頭株主である阪神電鉄の価値も落ちていきます。

これはあくまでも創造の話で実際に上場した場合、どのように動くかはわかりませんが、これらのことを懸念した阪神電鉄の経営陣は、阪神タイガースの上場を拒否し、このまま村上ファンドの好きにはさせないと言う思いで、新たな支援者を探すことになりました。

阪神電鉄が阪急電鉄に支援を求めた

阪神電鉄の経営陣は、これ以上、村上ファンドの好きにはさせたくないということで、新たな支援者を探し始めました。

その一つが、阪急電鉄の親会社である阪急ホールディングです。

阪急ホールディングスにTOB(公開買い付け)を行ってもらい、村上ファンドの保有する株式を全て買い占め、阪急ホールディングスの子会社となるのが狙いでした。

その狙いは、見事に成功し、阪急ホールディングスは実際に阪神電鉄株をTOB(公開買い付け)することになります。

村上ファンドは、その頃、ニッポン放送株の件で代表の村上氏が取り調べを受けるなど阪神にかまっているどころではなくなり、阪急ホールディングスのTOB(公開買い付け)に応じることにしました。

これによって、阪急ホールディングスによる阪神電鉄株の買収が完了し、阪急ホールディングスは、阪急阪神ホールディングスに社名を改め、両社の持ち株会社となりました。

どうして阪急電鉄は支援をしたのか?

阪急電鉄からすれば、競合で並走する阪神電鉄の路線は必要ないように思えますが、どうして支援に応じたのでしょうか?

それは、阪神電鉄の持つ、梅田周辺の土地が魅力的だったからだと言われています。

阪神百貨店を中心とする、梅田周辺の土地は今後も価値が上昇していくとみられ、そこを押さえておきたかったのでしょう。

また、いくらライバルだとはいえ、同じく阪神地域を盛り上げてきた仲間であり、その企業が崩れていくとなると、少なからず阪急にとっても影響があるはずです。

最悪の場合は、阪神地域そのものの魅力が薄れ、阪急もダメージを受ける可能性もあります。

それを阻止したいと言う思いもあったのかと思います。

真実はわかりませんが、圧倒的に強いJRと競合している区間でもあるので、JRのシェアを少しでも奪うことができる起爆剤になると考えたのかもしれません。

あくまでも、この内容は、調べられる範囲の内容で、事実とは異なることや間違いも含まれているかもしれませんが、ご了承ください。

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