設置が急がれるホームドア
今年、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で視覚障害者の男性がホームから転落死するという、とても悲しい事故が起こりました。
以前から、特に大都市部におけるホームからの転落事故というのは後をたたず、大きな社会問題となっています。
この事故を受けて、世間では改めてホームドアの設置を求める声があがっています。
問題は事故だけではありません。
「人身事故」の多くは、実際はホームを乗り越えることによる「自殺」です。
この「自殺」を防止するという意味でも、ホームドアの設置は人権上の観点からも配慮されるべき案件であると考えられます。
国土交通省の発表によると、平成28年3月末でのホームドア設置駅数は、665駅で、平成19年度末でのホームドア設置駅数318駅から、およそ二倍にはなっていますが、それでも国内全駅の中でみると設置率は、わずか7%にすぎません。
国会内でも、以前から度々この問題は論議されており、日本共産党などは鉄道事業会社へ再三にわたる要望書を送っています。
なぜ、ホームドアの設置はすすまないのでしょうか?
予算の問題
概算では、ホームひとつあたり数億円~10数億円もの費用がかかると言われています。
東京、大阪などの大都市部では、一つのホームが長く、またホーム数も多いので、さらにその費用は膨れ上がります。
これだけ設置に巨額の費用がかかるとすると、その設置費用を鉄道事業者のみに負担してもらうというのは、現実的には難しい部分もあります。
例えば、東京都の場合、3分の1を国、3分の1を東京都、残る3分の1を鉄道事業者が負担するという形で整備が進められてきました。
しかし現状は、新幹線や地下鉄、モノレール、新交通(ゆりかもめなど)など、安全性の観点から当初より設置されていたり、そもそも自治体が鉄道事業者であったりと、予算面でのハードルをクリアした路線に偏っています。
それ以外の私鉄では、JRも含めて、首都圏や名古屋圏、関西圏の一部路線のみに留まっています。
自治体や鉄道事業者にとって、予算的な側面から容易に捻出できるというわけではないこともあり、難しい問題となっています。
規格の問題
ホームドアの設置が進まないもう一つの理由は、車両の規格の問題もあります。
例えば新幹線や地下鉄であれば、編成やドア数などが統一されている場合が多いので、設置もスムーズに行きますが、在来線などではバラバラと言う事がほとんどです。
特にJRなどは同一ホームに特急電車や通勤電車まで、様々な車両が停車するわけです。
逆にいえば、ホームドアを設置することで、どんな車両も自由に止められるというメリットを失ってしまう事になり、運用面から考えても難しい側面があります。
それら全てに対応するホームドアを開発、設置するとなると、その現実性は極めて困難と言えるでしょう。
私たちできる事とは
上記でご紹介したように、ホームドアの設置は、必要ではありますが、なかなか難しい側面があり、一足飛びで導入するというわけにもいきません。
私たちにできることは、ホームから転落した人を発見したら、非常ボタンを押したり、すぐに駅員さんに連絡したりすることを怠らないことは勿論のこと、今回のように盲導犬を連れている人や、白い杖をついている人がいたら、その人のことをさりげなく気にかけるよう「助け合い」の精神を持つことでしょう。
また私たち自身も、普段から黄色の点字ブロックの後ろに下がって車両を待つ、白線をこえてホームの端などを歩いたりをしないよう、自ら事故の加害者や被害者にならないよう、日頃から細心の注意をするようにしておきましょう。