コロナ禍で旅客が減り、鉄道各社は大幅な赤字を記録した2020年度でしたが、それ以前はというと、どの会社もかなりの利益を出していました。
実際に、コロナ禍の影響を多少受けた2019年度は、大手鉄道会社全てで黒字を達成しており、一四半期分が飛んだとしても十分に利益を出せるぐらい稼いでいました。
その中でも特にすごいのがJR東海です。
JR東日本の収入が約3兆円に対して、JR東海の収入は約1兆8000億円ですが、利益の部分を見てみると、JR東日本が約2000億円、JR東海が約4000億円と大逆転しています。
利益率を見ても、JR東日本が約6%に対して、JR東海が約21%となっています。
「JR東日本の利益率が低いのでは?」と思うかもしれませんが、JR西日本もJR九州も5%〜7%の利益率で、JR東海だけが異常に高いことが分かります。
私鉄を見ても、一番利益率の高い会社が東京メトロの約11%なので、JR東海の凄さは異常です。
どうして、JR東海はここまで利益率が高いのでしょうか?
今回はJR東海の利益率が異常に高い理由を解説していきます。
理由① 営業距離が短い
JR東海の利益率が高い理由は営業距離の短さにあります。
JR東日本の営業距離が約7400kmに対して、JR東海は約2000kmしかありません。
JR西日本は約4800km、JR九州は約2200kmとなっているので、上場しているJRの中でも一番短いことが分かります。
営業距離が短いということは、それだけメンテナンスにお金がかかりません。
もちろん、設備や老朽化によって、単純に計算できませんが、営業距離だけを見ると、JR東日本はJR東海に比べて3倍近くのメンテナンスが必要です。
それに対して、収益が3倍あるのかというと、そんなことはありません。
JR東海は短い距離で効率よく稼いでいるということです。
理由② 客単価が高い
JR東海の収益はほぼ東海道新幹線です。
なので、1人当たりの単価がかなり高額になり、少ない労力で多くのお金が稼げるということになります。
例えば、東京から新大阪まで移動しようと思うと、2時間30分で13000円の収入が発生します。
それに対してJR東日本の主要路線である首都圏在来線では、2時間30分乗ってもらったとしても、3000円ほどの収入にしかなりません。
つまり、同じ時間を使っているのに、稼げる収入が全く違うということです。
もちろん、車掌の数が違ったり、条件が違うので単純に計算できませんが、1本の列車を運転して、それにかかる人件費を考えると、JR東海の方が圧倒的に効率よく稼いでいることになります。
JR東日本も新幹線を運転していますが、それでもJR東海ほど新幹線に乗るお客さんを獲得できていません。
どこまでいっても、JR東日本やJR西日本は、在来線での収入が大半になるため、これ以上の客単価アップは見込めないだろうと考えています。
理由③ 3大都市圏を抑えている
日本で唯一、3大都市圏で営業をしているのはJR東海しかありません。
東京、大阪、名古屋圏内の人口は日本人口の半分を抑えており、それらの輸送を担うJR東海は、なにもしなくても需要を生み出せます。
リニア中央新幹線が開業すると、さらに短い時間で3大都市圏を結ぶことになります。
つまり、短くなった分、人件費を削減して収益を得られるということです。
もちろん、設備費用や電気代などが発生するので、単純な話ではありませんが、JR東海が3大都市圏を抑えている限り、他社が利益率で上回るのはかなり厳しいのかと考えられます。
新幹線が無くなると危うい
JR東海の強さは東海道新幹線の収益の良さです。
逆を言うと、東海道新幹線が無くなってしまうとJR東海は赤字企業に転落します。
それだけ、東海道新幹線に依存しているので、災害時にはどうしても弱くなります。
コロナなど、感染症はもちろんですが、それ以外にも東海地震・南海トラフによる全線不通になる不安を抱えています。
それに対応するために準備しているのがリニア中央新幹線です。
リニア中央新幹線は海から離れた場所を走っているので、東海地震・南海トラフの影響を受けにくいとされています。
これにより、東海道新幹線に万が一のことがあってもJR東海の利益は確保できると言う計算になります。
とは言っても、建設に10兆円近くの費用がかかるとされているので、どうなるのかは不透明です。
個人的にはリニア中央新幹線がJR東海の強さを壊すと考えています。
リニア中央新幹線には乗ってみたいですが、あまり無茶をしないほうが、良いのかと思います。