兵庫県の姫路駅から大阪府の阪神梅田までを走る、山陽電車の直通特急という電車があります。
特急という名前がついていますが、特急料金などは必要なく、乗車料金のみで乗車できる電車です。
山陽電車は姫路駅から神戸の西代駅までの路線ですが、高速神戸線、阪神線を経由して大阪梅田まで直通運転をする電車が設定されています。
それが、今回のテーマである「直通特急」です。
ただ、この直通特急ですが、競合するJR西日本の新快速と比べて、かなり遅いという特徴があります。
どれぐらい遅いかというと、姫路駅から大阪駅まで移動するのに、JR西日本の新快速だと1時間ですが、山陽電車の直通特急ですと1時間40分近くかかります。
経由する駅が違うので距離は若干違いますが、ほぼ並走する2つの電車でどうして、ここまで違うのでしょうか。
今回は山陽電車の「直通特急」が遅い理由について考えてみました。
直通特急が遅い理由① 線形が良くない
JR西日本の新快速が走る神戸線は、比較的直線区間が多いのに対して、山陽電車は比較的カーブが多いです。
その証拠に神戸線の制限速度は130kmに対して、山陽電車は110kmまでしか出すことができません。
山陽電車の場合、住宅地の中を通ることが多く、真っ直ぐな直線区間を取得することが難しかったのかと考えられます。
直通特急が遅い理由② 騒音問題
住宅地の中を通るということで、騒音問題にも気をつけて運行しなければなりません。
スピードを出すと、どうしても騒音が大きくなり、地域住民から苦情が発生します。
なので、スピードを出したくても出せないのかと考えられます。
その証拠として、山陽電車の軌間は新幹線と同じく標準軌を採用しています。
つまり、安定性もあり、軌間だけを見れば速く走れる可能性もあります。
それでも、速く走らないのは騒音を気にしているのかと予想されます。
直通特急が遅い理由③ 地域輸送を担っている
一番大きな理由は、山陽電車は地域輸送を担っている鉄道会社だからです。
JRよりも停車駅が多く、かなり細かく停車して行きます。
そして、JRの乗り換え機でJRに引き渡すという形で、地域間の輸送を行っているのが実情です。
その証拠に、朝夕の明石駅の乗り換えはかなり混雑しています。
JRの駅を利用しようと思うと、かなり遠くまで自転車で向かう人が大半ですので、そういった人に向けて近くに駅があるというメリットを打ち出し、差別化を図っているのだと考えられます。
直通特急が遅い理由④ 車両が古い
山陽電車は近年、新車を導入していますが、それでもかなり古い車両も残っています。
古いといっても、それなりに高性能な車両ですので、スピードは出ると思いますが、電気効率を考えると、それほどスピードを出さない方がいいという可能性もあります。
もしかすると、新車への置き換えが進むと、スピードアップが実現するかもしれませんね。
あくまでも予想です
今回の4つの理由はあくまでも予想です。
一番有力な説は、③の地域輸送を担っているからです。
複数の会社を直通する関係上、どうしても山陽電車だけの力ではスピードアップを図ることはできませんし、JRに敵うとも考えていないと思います。
なので、山陽電車の戦略としては地域の輸送をメインに、小さな駅から主要駅まで運ぶということをやっているのだと思います。
その証拠に、直通特急の停車駅は新快速の3倍近くあります。
それだけ、細かくお客さんを拾いながら走らせているということです。
さらにいうと、山陽電車の普通はもっと細かく停車していきます。
ほとんどの駅間が1kmほどで、中には600mしかない駅も存在します。
姫路から神戸まで完全にJRと競合しているという珍しい路線だからこそ、それぞれが差別化を図り、それぞれのニーズを生み出しているのだと思います。
もちろん山陽電鉄もいいところありますよ。