1月22日より東京23区と武蔵野市・三鷹市エリアで始まった「相乗りタクシー」の実証実験。
配車アプリを利用して目的地が同じ方向の複数名を募り、単独移動するよりも3割〜5割程度安くして、タクシーの利用を増やそうというのが狙いです。
しかし、この「相乗りタクシー」には様々な懸念点があると私は思っています。
①家までの送迎が不可になる
相乗りタクシーで途中下車するお客さんは、プライバシーの保護の観点から自宅前までの送迎は難しいのではと思います。
特に、男女ですと、これをきっかけにストーカーが始まってしまう事も可能性としてゼロではありません。
なので、自宅から少し離れた場所に止めてもらう事になると思うのですが、それだったらタクシーを利用する価値が半減します。
終電後など、一定の利用価値はあるかもしれませんが、夜ですとさらに犯罪の危険が増すので、3割程度の割引であれば、正規料金を払う人が多いのではと思います。
②所要時間が長くなる可能性がある
相乗りタクシーは、途中下車が必ず必要な為、遠方の人ほど、寄り道が多くなり、所要時間が増えます。
どの程度、増えるかによって考え方が異なると思いますが、20分も違えば、3割安くても、あまり納得がいかない人も多いのではと思います。
また、複数名を募るまでに時間がかかると、さらに遅くなります。
最悪の場合は、単独移動より1時間も違うという事が発生しても不思議ではありません。
これであれば、たとえ終電後であっても、早く帰ってゆっくりしたい人が大半だと思うので、利用価値を見出せないのではと思います。
③そもそも、移動よりもプライベート空間にお金を払っている
そもそも、タクシーの目的は移動よりも、快適なプライベート空間の提供にあるのではと思います。
なので、電車よりも多少時間がかかっても、タクシー移動を選ぶ人がいます。
ということは、既存のお客様は間違いなく相乗りを利用せず、単独利用を今後も使っていくと考えられます。
そうなると、相乗りタクシーのターゲットはこれまで電車移動をしてきた、庶民になるのですが、例えば、東京から新宿までJRで194円だった料金が、相乗りタクシーを利用することで1500円になれば、どちらを選ぶでしょうか。
私なら、間違いなく電車を選びます。
理由は二つあり、一番は値段の差です。
そして、もう一つは所要時間が電車の方が10分以上早いからです。
普及の可能性はあまりない
今回、実証実験に参加する業者は日本交通グループ11社と大和自動車交通グループ4社の合計約900台です。
東京都内のタクシーが5万台以上と言われているので、ほとんどが実験に不参加という事になります。
理由は、配車アプリの提供が難しいからだと私は思っています。
配車アプリを統一すれば、いいのですがそうなってくると、各タクシーに何かしらの装置を設置する必要があり、さらに国がアプリ開発をしなければなりません。
今回は、実験のため、民間企業が作ったアプリを全面利用しているようですが、本格導入となると、個人タクシーも含め各事業者に何かしらの負担をお願いしなければなりません。
しかし、都内で現在でもある程度の利用客が見込まれるため、その設備投資を拒む業者も必ず出てきます。
そうなると、導入までに時間がかかり、地方となれば、さらに時間がかかります。
そこまで、時間をかけて、導入の価値があるかと言われてと、私は感じません。
実際は、どうなるかわかりませんし、その為の実験なのですが、実用化はかなり難しいのではと思います。
なお、この相乗りタクシーは2月22日から3月11日まで実験を行なっています。